国立文楽劇場でのひととき

国立文楽劇場、この春の大阪公演は明日19日は休演。20日から演目が昼夜入れ替えになります。さて、今日初めてじっくりと文楽を鑑賞しました。「加賀美山旧錦絵」(かがみやまこきょうのにしきえ)の五段(全十一段あるらしいですね)を見てきました。

私と文楽の出会いは恥ずかしながら市長になった翌年、まだ半月も経っていない平成20年の1月公演の鏡開きでした。日本橋(にっぽんばし)の国立文楽劇場前で鏡開きのふるまい酒はニュースなどでご覧になったことがおありだと思います。

その際に6人(でしたか)の人間国宝の方たちと並んで、鏡開きをしたときの印象が強烈でした。私の横に七福神の福禄寿が木槌を持ってスタンバイ、そして合図とともに振り下ろす…当然、人形なのですが、その存在感はまさしくリアル。

福禄寿さん(さん付けでいいのだろうか?)が本当に息をしているかのような不思議な感覚に襲われたのです。あぁ、これが伝統芸能の持つ力なのか…そう感じました。世界無形遺産、大阪が誇る人形浄瑠璃文楽を実際にご覧になる機会はそう多くはないと思いますが、何としてでも子どもたちにこの感覚を実感して欲しい。そう思ったことを鮮烈に覚えています。

太夫、三味線、人形遣いの三者が一体となって演じられる文楽は「三業一体」といわれる総合芸術・芸能です。太夫、三味線が台詞、情景などを耳に訴え、それに呼応して人形遣いのこれも三人が頭と右手、左手、足とそれぞれに呼吸を合わせて三者、三業の統合に観客を惹き込む仕掛け。これが凄い!

大阪市には優れた芸能、芸術に精進しておられる方を称揚し、その文化を次世代に残していこうという「咲くやこの花賞」があります。去年で29回目。演劇・舞踊部門で文楽界9人が受賞されています。

今日の最初、「又助住家の段」の切(その段の最高の見せ場を務める太夫)は咲くやこの花賞第1回受賞者の豊竹咲大夫さん、中を務められたのが28回目の受賞者である豊竹咲甫大夫さん。他にも多くの受賞者がこの公演に出ておられます」

圧巻は皆様ご存知、人形遣い、桐竹勘十郎さんの「お初」でした。たおやかな身のこなし、主を想い揺れ動く心中の表現に、惹き込まれました。余談ですが、幕間に買ったばかりの『文芸春秋』五月号を開くと、「日本の顔」という最初のグラビアページが桐竹勘十郎さん。嬉しくなってしまいました。